赤べこがつなぐシリアとの絆 TeamBekoさん「シリアとどうかかわるか」講演会
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先日2月29日(土)、Team Bekoさん主催「シリアとどうかかわるか?」に参加。シリアでの小児がん支援の現場、日本からの支援策などについて代表の佐藤真紀さんのお話をお伺いしました。
Team Beko さんはシリアの小児がん患者を支援する民間団体。福島の伝統工芸で疫病や災厄を防ぐといわれる「赤べこ」をマスコットにして活動をされています。
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シリアでは内戦の激化により、
①チェックポイントによる交通路の寸断
(プラス、政府支配地域⇄反政府地域のあいだの移動のしづらさなども)
②経済制裁による医薬品不足
が発生。
それにより、小児がんの子どもたちの治療環境の悪化が深刻化しているそうです。
現在、全国で約7000人の小児がん患者がいるそうですが、生存率は50%ほど。
これは日本での生存率(70~80%)と比べても低く、早急な支援が望まれる状態です。
海外で治療を受けるという選択もありますが、資金不足にくわえ、受け入れのハードルの高さがネックに。多くのシリア難民を受け入れている欧米諸国も、労働力としての受け入れを念頭に置いており、また、がん患者は医療費もかさむため、受け入れに消極的なのだとか。
結果、多数の家庭が高額な自費治療を選択せざるをえない状況になっています。
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Team Bekoさんの第一目標はシリア国内で一人でも多くの子どもが安心して小児がん治療を受けられるよう支援を行うこと。
がんを患った女の子のお母さんが「イギリスに行けたらいいんだけど・・・でも、この子が生きられないならシリアで死なせてあげたい」という言葉が胸に刺さりました。
この女の子はその後、結果的にはイギリスに渡航して治療を受けることができましたが、惜しくもお亡くなりになったそうです。
現在の課題は支援のための資金をいかにして調達するか。
シリア国内では2006年から「BASMA」という支援団体が小児がん支援をおこなっているそうですが、意外と富裕層(海外移民含む)の多いシリアではチャリティパーティが有効な資金元になっているとのこと。
ムスリムが多いシリアでは喜捨の文化が浸透しているのも強い、ということでした。
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「シリア=戦争、がんの子ども=可哀想というイメージがあるが、これからの支援はそれでは立ち行かない」
ということで、Team Beko さんではスポーツやアート、現地との交流を取り入れた新しい支援呼びかけ方法を模索しているとのこと。
1)サッカー×シリア×日本
福島の赤べことサッカーをかけ合わせた
「サカベコ」で中東や日本のサッカーシーンを紹介。
現地の子どもたちにべこに絵付けしてもらうワークショップなども開催。
※アップされてるサカベコ動画がかなり面白い!
サッカー好きの方、ぜひご覧になってください⚽️
2)シリアの小児がんの子どもたちのアート作品
現地から絵を送ってもらいそれを展示。「たとえどんな境遇におかれていても、子どもたちには無限の可能性がある」(イベントでのプレゼン資料より)
3)グッズ制作
オリジナルべこやシリアのアート作品の販売
この3本柱で広く日本でも関心を呼び起こしていきたいとのことでした。
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わたしはパレスチナとシリアのアートの比較のお話がとても印象にのこりました。
佐藤さんいわく、同じ凄まじい戦闘を経験した2国ですが、前者で子どもたちが創作するアートに戦争モチーフが多い(大人たちもそれを賞賛する)のにたいして、後者のシリアの子どもたちの作品では、すくなくとも現地で佐藤さんが見学したときには、戦闘シーンなどが描かれるものがあまりなかったそう。
シリアの人たちが芸術にもつ矜恃のようなものを感じられたそうです。
戦争のアートセラピーも国や時代によっていろいろなちがいが見られるかもしれませんね。
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佐藤さんのお話につづいて、現在のシリア各都市の貴重な動画の紹介も。爆撃でぼろぼろになった街並みには言葉を失うものがあったけれど、自分が最後に訪問した2000年代と変わらない風景もたくさんあって、悠久の歴史をもつ国の堅固さも感じました。
東京外語大の青山先生の最新シリア事情の解説もぜひ聞きたかったけれど、時間切れで残念ながら中座。日本の新型ウイルスをめぐる動きもそうですが、情報が錯綜するなかだからこそ、大局的な構造はしっかりと押さえておきたいと思いました。
こちら(↓)は最近、青山先生がYahoo! Newsで連載されている「シリア情勢2019」シリーズ。複雑で刻一刻と変化する情勢をつかむための貴重な視座が得られます。
牛神さまは農耕神として古代いろいろな地域で崇拝されていた。
池袋の古代オリエント博物館さんのTwitterでもこんなかわいいべこ像が紹介されてます。
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もうずっと前ですが、2005~6年の半年間を留学生としてシリアで過ごしました。その思い出はわたしにとって生涯の宝物です。
今年は戦争にくじけず、懸命に生きるシリアの人たちの活躍を伝える書籍の刊行にも携わりたいと考えています。